台東区の税理士、坂本です。本日はクライアント様からの問い合わせがあった内容をまとめて見ました。
特別な利害関係のない第三者である個人間での売買
特別な利害関係のない(例えば縁故や血縁関係はないし、個人→法人間でもない)第三者である個人間での売買で需給バランスや個別の事情により決められる取引価格は、それが結果的に時価よりかなり低い金額だったとしても相手方に利益を与える目的で取り決められたものではありません。したがって、その売買契約額が時価であると判断するのが一般的です。その場合、贈与税が課税されることはまずない、と思われがちですが、極論で1円での売買も可能性としてある訳ですから、何らかの「著しく低い価額の対価」の基準があってしかるべきです。
所得税法上の低額譲渡
所得税法では、個人から法人への譲渡で、時価の2分の1に満たない価格で譲渡した場合を「著しく低い価額の対価」による譲渡とし、みなし譲渡益の課税をする規定などがありますが、個人と個人の間の取引については適用されず、所得税の課税はありません。個人から法人への譲渡でありながらも、時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲はいったいどこまでなのでしょうか?
所得税法施行令第169条によれば、法第59条第1項第2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする。と定められています。
なお、請求人が納税者から不動産を譲り受けたことが、国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらないとした、低額譲渡の範囲の裁決事例には次のような判例があるようです。
国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価」と認められるか否かは、結局、その財産の種類、数量の多寡、時価と対価との差額の大小、その他諸般の事情を総合的に考慮して、時価(通常の取引価格)に比較して社会通念上著しく低い額と認められるか否かにより判断するほかなく、不動産のように、時価が必ずしも明確でなく、人により評価を異にする値幅のある財産については、(国税徴収法基本通達第39条関係6の注書の1)に定めるように、時価のおおむね2分の1に満たない額をもって、著しく低い額による対価と解するのが相当である。・・・中略・・・したがって、本件譲渡は「著しく低い額の対価による譲渡」に該当せず、請求人に対してなされた処分は違法であるから、その全部を取り消す。(平成12年5月31日裁決)
低額によるものであるかどうかの判定については、不動産のように通常は人により評価額を異にし、価額の差がある程度開いていたとしても著しく低い額と判定すべきでない場合がある。この場合において、値幅のある財産については、特別の事情がない限り、通常の時価のおおむね2分の1程度に満たない価額をもって著しく低い額と判定して差し支えない(基本通達第39条関係7、松江地判 昭和44.7.2、東京高判 昭和48.11.29)
結論
以上、所得税法の規定及び上記の判例等から、特別な利害関係のない第三者である個人間売買の低額譲渡の場合、売却価格が時価の2分の1に満たない価額は「著しい低い価額」に該当し、譲受者は「低額譲渡」として贈与税が課税されるという結論が導き出されました。
いずれにしても、「社会通念に照らして総合的に勘案」が基本のようですので、不動産を時価より安く売却・購入する場合には、個別の事情に応じて慎重に売買価格を決めていただきたいものです。