台東区の税理士の坂本です。今回のネタは、確定申告時期に多く質問を受けるスーツ代の経費計上についてです。
「スーツ代は、経費計上出来るものなのでしょうか?」この質問に対して、「税務署と戦う覚悟であれば、計上致します!」というのが私見です。

 スーツ代については、サラリーマンの場合には特定支出控除というもので、経費と同じように給与額から差引く事が可能で、平成26年以降追加された項目になります。しかし、現実には年収600万の方の場合、スーツ代を含む特定支出額が87万円の超えたらその超えた部分の支出のみを認めるといった規定です。その上、その支出を会社に事業用であると認めて貰う必要があります。
実際に使おうと思うと、余り現実的な規定ではありません。。。

 スーツが認められないというのは、過去の判決でスーツ代が論点となった裁判(京都地裁昭和49年5月30日判決)が基になっています。この裁判は、ある大学教授が確定申告をしなかったため税務署から税金を決定されたのですが、その際、給与所得控除がある給与所得者に対し、自身が著しく不公平だとして、スーツ代なども必要経費であると争ったケースです。判決は、スーツ代を家事関連費として勤務上必要とした部分を他の部分と明らかに区分することができるときは、所得税法第45条の家事関連費等の必要経費不算入等に規定する通り、その部分を必要経費として認める余地があるとしたものの「原告が主張する被服費を支出したとの事実を認めるに足りる証拠がない」として大学教授の訴えを退けました。このように過去の裁判ではスーツ代は家事関連費であり、事業用部分を明瞭に算定すれば必要経費との考えを示したものの、結果的には認められなかったのです。

 実際に事業用部分を明確に算定が出来るかという問題ですが、計上するにしてもオフィスなどに常に常備しておいてプライベート使うことはないなどの明確な説明が出来ない場合には、過去の判例を持ち出されて否認される可能性が高いのではないでしょうか。

 サラリーマンに特定支出控除を認めているのだから、個人事業主についても認めて貰えるのではないかといった趣旨について、一部の税理士先生の間では、計上可能と判断される方もいらっしゃいます。ここからは私見ですが、1点数万円のスーツが経費計上されるかを争うよりも、その他の部分で計画的に経費を捻出して計上することが、対税務署においても有効はないかと考えてしまうのです。